長谷川一夫と大川橋蔵、2つの銭形平次が語る悲しみと栄光の物語
銭形平次といえば、映画では長谷川一夫が生涯で18作で演じた一番の当たり役でした。そう、2014年は「長谷川一夫 没後30年」の年でもありました。チャンネルNEKOでのみ、ちょっとだけの特集が組まれていました。長谷川一夫と大川橋蔵の二人ともが銭形平次を一番の当たり役にしている俳優です。映画は長谷川一夫で、ドラマは大川橋蔵ということになります。もちろん映画のヒットや評判がなければドラマは作られませんでした。
長谷川一夫の映画タイトルは「銭形平次捕物控シリーズ」、自身で唯一の10作以上のシリーズ作です。日本の歴代の映画スターの中でもこの人は同じ役をあまり演じませんでした。大映版のシリーズの1作目のタイトルは「銭形平次(1951)」となっています。大川橋蔵の映画版の「銭形平次(1967)」と同タイトルなので(年数)で区別しています。長谷川一夫の銭形平次といえば、大映の映画。大映版の全17作のシリーズからすれば、試作に該当する「銭形平次捕物控 平次八百八町」(1949)が新東宝で作られています。映画会社である新東宝が異色作路線へ展開する前の時期の作品です。まだ映画化医者としての方向性を模索してたときともいえるでしょう。
この新東宝などで作られた「銭形平次捕物控 平次八百八町」が長谷川一夫の銭形平次の正確な1作目に該当するのです。大映版の1作目の「銭形平次(1951)」は長谷川一夫の銭形平次としては、通産の2作目に該当するわけです。この通産の2作目での大映版の1作目は”捕物控”が付いていないのです。この通産2作目が1作目だと勘違する可能性があるほどです。
銭形平次捕物控シリーズ 銭形平次役 18作 12年(1949~1961)
1 1949「銭形平次捕物控 平次八百八町」
2 1951「銭形平次(1951)」
3 1951「銭形平次捕物控 恋文道中」
4 1952「銭形平次捕物控 地獄の門」
5 1953「銭形平次捕物控 からくり屋敷」
6 1953「銭形平次捕物控 金色の狼」
7 1954「銭形平次捕物控 幽霊大名」
8 1955「銭形平次捕物控 どくろ駕籠」
9 1956「銭形平次捕物控 死美人風呂」
101956「銭形平次捕物控 人肌蜘蛛」
111957「銭形平次捕物控 まだら蛇」
121957「銭形平次捕物控 女狐屋敷」
131958「銭形平次捕物控 八人の花嫁」
141958「銭形平次捕物控 鬼火燈籠」
151958「銭形平次捕物控 雪女の足跡」
161960「銭形平次捕物控 美人蜘蛛」
171961「銭形平次捕物控 夜のえんま帖」
181961「銭形平次捕物控 美人鮫」
製作会社・1は新東宝=新演技座、2~18大映京都
長谷川一夫も去年没後30年でしたが、今では、意外と人気がない俳優なのです。かなり前に全盛期がある俳優なので、リアルタイムで見ていた人でさえ、通算18作目の「銭形平次捕物控 美人鮫」(1961)18作目の当時で20歳だとしても現在73~74歳になっていますから、今20歳であると、テレビが取り上げてる俳優のみが俳優であるという認識なってしまっている状況です。そのため、今に見なければ知る機会さえもありません。偶然にも最初は新東宝と新演技座の共同製作で作られていたこのシリーズですが、新演技座が潰れても大映で継続して成功を収めています。新演技座という悲しい過去が布石となり、栄光の未来を作っている現実があります。
個人的な長谷川一夫の印象を言わせてもらえば、演技は見ていて面白いと思えない演技が多くあります。演技というものは面白ければよいものではないものなのです。海外は面白おかしい演技を重視したりする。ここはアメリカでもなければ、日本という別な国であるのです。日本映画の衰退により、基準がアメリカになった部分もありますが、アメリカが基準なのが大きな間違いなのかもしれません。
顔が戦前の二枚目のイメージで定着されている俳優の割には、ほんとに地味で弱い演技もする。美意識のある演技。歴代の映画スター俳優が目指した演技は個々によっても全然違うため、どれも正当化できないのです。長谷川一夫はは出演した代表作たちの印象や流れで美意識のもある文学的な方法の演技へと行くことになったのです。長谷川一夫といえば、時代モノなどの文芸作にも多く出ている俳優。日本映画の歴代では文芸作が異常に評価された時期があったのと近く、長谷川一夫の俳優としての評価の一部分が文芸作と関連付けて大きめに評価されてしまったといえるのでしょう。長谷川一夫は1位ではなく、数多くの要素で歴代上位に評価される俳優です。映画愛子的には日本歴代の映画スター4位の評価をしています。全履歴や代表作数、当たり役、俳優としての歴代記録、影響力などから判断してこの順位にしています。
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2015/02/22 20:20 | 超大物俳優 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0)