「旗本退屈男」の早乙女主水之介の俳優。長年にわたってアノ俳優と競い続けた日々
映画の全盛期とは競い合いの歴史でもあります。今の日本映画の衰退からすると想像することは難しいことですが、現実に毎日が映画という日常を仕事にしている映画スター、映画俳優たちがいました。1年中、ほとんど休み冴えなく映画撮影をしているのです。今は実写の人気さえも低迷していますが、それだけ人気があり需要がそれだけありました。「旗本退屈男」の早乙女主水之介の俳優もこうした競い合いのなかに身を投じていたのです。
・時代劇映画の市川右太衛門が主演した代表作シリーズ
「孔雀の光の3部作」(1926)3作 藤島求馬、他 <マキノ御室>
「鳴門秘帖シリーズ」(1926~1954)28年、5作 法月弦之丞 <1~3がマキノ御室(*1)、4~5東映京都>
「高浜常盤シリーズ」(1927~1928) 2年、4作 <右太プロ>
「旗本退屈男シリーズ」(1930~1963) 33年、30作
<1~8が右太プロ、9松竹太奏10新興京都、11~12東横(*3)13~30東映京都>戦前9作 戦後21作
「大名シリーズ」 (1954~1964)10年、9作<東映京都>
新国劇で最初のスターといわれる伝説の俳優沢田正二郎を演じる市川右太衛門。巨匠監督・マキノ正弘(当時は博)巨匠で脚本を勤めた黒澤明による唯一のコラボレーションが実現した東横(のちの東映)の貴重な映画です。
・時代劇映画の市川右太衛門が主演した通称・題材モノの代表作シリーズ
「忠臣蔵モノの出演・主演作」(1931~196130年、9作(主演2作 助演7作 役はさまざま
「天一坊事件モノの主演作」(1933~1961)28年、2作 山内伊賀之亮
「清水次郎長モノの主演作」 (1931~1940)9年、3作 清水次郎長
「荒木又右衛門モノの主演作」(1938~1959)21年、4作 荒木又右衛門
「大岡越前守モノの主演作」(1939~1960)21年、4作 大岡越前守
「新撰組モノの主演作・近藤勇」(1940~1963)23年、2作 近藤勇
「水戸黄門モノの出演・主演作」(1952~1960)主演2作は水戸黄門、助演2作は他
「オールスターモノの出演作」(1932~1963)31年、26作 役はさまざま(主演含む)
「オールスターモノの主演作」(1950~1963)13年、10作 役はさまざま
映像作品では”旗本退屈男”の早乙女主水之介を世界1位の43年間演じています。映像作品で同じ役を31機会演じている俳優は他にもいますが、有名作で43年間はこの人だけです。「旗本退屈男(1930)」<右太プロ>からテレビ時代劇の「旗本退屈男(1973)」(東映など)までの43年間です。有名なのでデータはわざわざ出す必要はないと思いますが、知らない読者の方もいられると思いますので一応は出してみます。
市川右太衛門の「旗本退屈男シリーズ」 計30作 (1930~1963)
33年 戦前9作 戦後・東映19作,松竹で2作
1・ 1930「旗本退屈男(1930)」
2・ 1930「京へ上がった退屈男」
3・ 1931「仙台に現はれた退屈男」
4・ 1931「江戸へ帰った退屈男」
5・ 1933「爆走する退屈男」
6・ 1935「中仙道を行く退屈男」
7・ 1935「中仙道を行く退屈男 後篇 十万石を裁く退屈男」
8・ 1937「富士に立つ退屈男」
10・1938「宝の山に入る退屈男」
11・1950「旗本退屈男捕物控 七人の花嫁」
12・1950「旗本退屈男捕物控 毒殺魔殿」
13・1951「旗本退屈男 唐人街の鬼」
14・1952「旗本退屈男 江戸城罷り通る」
15・1953「旗本退屈男 八百八町罷り通る」
16・1954「旗本退屈男 どくろ屋敷」
17・1954「旗本退屈男 謎の百万両」
18・1954「旗本退屈男 謎の怪人屋敷」
19・1955「旗本退屈男 謎の伏魔殿」
20・1955「旗本退屈男 謎の決闘状」
21・1956「旗本退屈男 謎の幽霊船」
22・1957「旗本退屈男 謎の紅蓮搭」
23・1957「旗本退屈男 謎の蛇姫屋敷」
24・1958「旗本退屈男(1958)」
25・1959「旗本退屈男 謎の南蛮太鼓」
26・1959「旗本退屈男 謎の大文字」
27・1960「旗本退屈男 謎の暗殺隊」
28・1961「旗本退屈男 謎の七色御殿」
29・1962「旗本退屈男 謎の珊瑚屋敷」
30・1963「旗本退屈男 謎の龍神岬」
31・1973「旗本退屈男(1973)」(半年間のテレビドラマ)
*1)マキノ御室は日本映画の父である牧野省三の映画会社
*2)右太プロは市川右太衛門の映画会社
*3)東横は東映の前身、事実上は現在も存在している東映
テレビドラマの「旗本退屈男(1973)」(1930~1973)を含めると33年となります。
言うまでもないと思いますがNETは現在のテレビ朝日系列です。
上記の”時代劇映画の市川右太衛門が主演した通称・題材モノの代表作シリーズ”を見ていただくとわかるかと思いますが実に多彩です。多彩といっても片岡千恵蔵や長谷川一夫はさらに多彩ですが歴代レベルでは右太衛門も十分に多彩な方に入ります。
片岡千恵蔵は「国定忠治の主演映画」で映画で30年や「遠山金四郎の主演映画」では24年(1938~1962)ですが、テレビ時代劇のオムニバス作品「江戸巷談 花の日本橋」(1971)の1,2話を含めると33年にわたり、演じています。30年が2つ、また「オールスター映画の主演作」で32年、35作があり、「忠臣蔵の主演の本伝・関連作」は35年で17作19編が存在しています。ある意味で4つあると数えることができます。ちなみに比較対照として渥美清の「男はつらいよ」の車寅次郎は28年を一つのみです。
市川右太衛門が長年にわたってアノ俳優と競い続けた日々のアノとはいうまでもなく、片岡千恵蔵を指しています。
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2015/07/28 18:57 | 超大物俳優 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0)