映画の歴代主演スターとしての苦しみと闘争の果てに下した苦渋の決断
まさに現代ではありえない映画界の激動の中を走り抜けてきたのは、戦前からの歴代の映画俳優たちです。市川右太衛門は長谷川一夫とは前回に書いているとおり、1932年「忠臣蔵 前篇 赤穂京の巻」で初共演していますが、前回にも書いている「維新の曲」(1942)にて、市川右太衛門は片岡千恵蔵や嵐寛寿郎、阪東妻三郎と初共演を果たしています。4名一度に初共演、しかも歴代上位の映画スター4名がです。これは大きな映画史に残る事件でした。
前回の記事⇒激動の戦時下に映画主演150作を突破した超大スターの波乱万丈の非常事態
市川右太衛門の大河内伝次郎との初共演は芸歴32年目に実る
市川右太衛門が残る一人(時代劇6大俳優、または6大スターにおいて)の大河内伝次郎との初共演は芸歴30年を越してからになっています。東映の1957年「魔の紅蜥蝪」(監督・深田金之助)でこの二人は初共演を果たしています。このとき市川右太衛門と大河内伝次郎はともに映画俳優歴が32年目であり、右太衛門は主演スターを維持していますが、大河内は助演俳優です。
時代を戦前に戻しますが、大河内伝次郎は戦前から助演も多少多めながらも、数多くの代表作に恵まれています。主演で5度以上演じている役は「忠治旅日記シリーズ」などの国定忠治や丹下左膳と2役のシリーズ該当も存在している「大岡政談モノ」の大岡越前守、「鼠小僧モノ」の鼠小僧次郎吉や「忠臣蔵モノ(本伝・関連作)」の大石蔵之助などです。そして反逆のヒーロー丹下左膳を16作で演じた「丹下左膳シリーズ」(主演・助演も含む)となります。時代劇の父・時代劇の巨匠、伊藤大輔との名コンビは日本映画の120年の歴史の中でも上位に入る30作近くに上ります。
大河内伝次郎・歴代主演スターとしての苦しみと闘争の果てに下した苦渋の決断
市川右太衛門をベースに記事は進行していますが、さらに大河内伝次郎にスポットを当ててみます。大河内伝次郎は1950年代になると新しい代表作や演目作やシリーズに恵まれず、人気や需要が急速に低迷し、準主役や助演が多くなります。そんな低迷期に戦前からの一番の当たり役、最後の丹下左膳となる「丹下左膳(1953)」と「続丹下左膳」(共にマキノ雅弘が監督、1953年)が主演で製作されていますが、主演の最晩年作の2作となっています。主演スターの彼にとっては苦しい時期だったのだと思われます。
1940年代は稲垣浩や黒澤明などの有名監督の作品には出演や主演したものの、主演スターとしてだけではなく、助演俳優として評価されてしまいます。このころの戦中には主演で戦争映画の代表作もあります。しかし1950年代になるとさらに主演数は激減していきます。1950年代といえば、阪東妻三郎が1953年に亡くなります。これは大河内や他の映画スターのとっても大きな衝撃でした。阪東妻三郎は晩年の1945年以降の戦後は主演数や代表作が激減し、映画俳優として比較的に苦しんで亡くなっています。大河内にとっての戦後は主演スターとして悩み苦しんだ部分が多いものでした。その証拠に存命の他の4名(片岡千恵蔵、市川右太衛門、長谷川一夫、嵐寛寿郎)との戦後の主演数や代表作の差が大きく開いていきます。
大河内伝次郎は市川右太衛門と初共演を果たした東映の時代劇映画「魔の紅蜥蝪」(1957)に出演しているころは、主役俳優を完全に退いています。大映から東映に移籍しての大きな決断だったのです。歴代上位の映画スターが主演から助演にまわされる俳優の気持ちは心ぐるしいものであったことに違いはありません。
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2015/09/06 18:46 | 超大物俳優 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0)
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